大阪弁護士会所属(平成元年登録) 弁護士辰田昌弘 法律問題でお困りの場合はお気軽にご相談ください。
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共有物分割請求・共有物管理(利用・改良),変更,保全
土地や建物など「一つの物」を何人かの共同で所有する場合(共同所有)があります。その一つとして「共有」という形を法律が認めています。共有している人(共有者)の共有物に対する権利を「持分権」といい,その割合をたとえば「持分3分の1」というように表します。共有が生じる事例としては,「夫婦で自宅の土地建物を共同購入するときに税金のことも考え二人の名義にした」,「何年かにわたり土地や建物を一部ずつ子どもや孫に生前贈与している」,「土地や建物の相続で遺産分割協議をしても分け方が決まらずやむなく共有にしておくことで合意した」などの場合があります。
※相続発生により遺産は相続人のものになりますが,複数相続人がいる遺産分割協議前の問題は「遺産分割」の問題として対応しています。
※マンションの問題は「共有」の場合もありえますが,ほとんどが「区分所有」の問題です。そちらの問題も別途取り扱っています。
【共有物の管理・利用・費用負担などの問題】
共有はうまく使うと良い制度なのですが,共有者の間で考え方が異なったり,遠方にいる共有者が無関心になったり,一部の共有者だけが利益を得ようとしたりする問題が発生しトラブルになることがあります。辰田法律事務所ではそのような共有物に関する法律問題全般を取り扱っています(共有物分割については後でご説明します)。
1 共有物の変更に関して発生するトラブル 共有物である建物を改築するなど,共有物を事実上変形させてしまうような行為を共有物の変更といいます。共有物を変更するには,法律上他の共有者全員の同意が必要なのですが(民法251条),その同意を巡ってトラブルになることがあります。その際に発生する次のような法律問題を取り扱っています。 ・共有物の工事をするのに共有者全員の同意が必要か否かの判断 ・一部の共有者が無断で共有物に変更を加えそうな場合に禁止を求める措置 ・共有物が変更されてしまった場合に原状回復を求める手続
2 共有物の管理(利用・改良),保存をめぐる法律上の問題への対応
(1)共有物の管理(利用・改良) 共有物の管理は,各共有者の持分の過半数で決めます(民法第252条)。共有物の管理とは,変更や処分以外の共有物の利用や改良行為などです。この場合には,次のような法律問題が発生する例があります。 ・共有物管理として過半数の同意が必要な場合かどうかの判断 ・一部の共有者だけが共有物(土地・建物)を無償で利用しており納得できない ・共有土地・建物を賃貸(または解除)して収益をあげたいが反対共有者がいる。
(2)共有物の保存 共有物の保存とは,共有物を現状のまま維持することです。たとえば共有建物が台風で破損した場合の修繕などです。これは,共有者であれば誰でも一人で(単独で)行うことができます(民法第252条ただし書き)。 よく問題となるケースは,共有する建物が空き家のまま老朽化し修繕するのにも,取り壊すのにも多額の費用が必要となるためどうするかというケースです。修繕費用は高額になりますし,売却できればよいのですがそれも無理であれば解決は難しくなります。そのような場合でもご相談しながら解決策を探っていきます。
3 共有物の費用負担問題,共有物に関する債権の回収
(1)共有物の費用負担に関する法律問題 固定資産税など共有物の管理のために必要な費用は,各共有者が持分に応じて負担しなければなりません(民法第253条)。その支払いがない場合に法的対応を行います。 ・費用を立て替えた者から共有物管理費用を負担しない共有者への催告 ・催告後1年以内に義務を履行しない場合に,一定の金額を現実に提供して,その共有者の持分を取得してしまう手続
(2)共有物に関する債権の回収 ・共有物の使用収益処分に関する債権の特定承継人への請求 ・共有物分割時に弁済を求める措置,帰属部分売却請求
4 共有物に関する訴訟(共有物分割訴訟は後述)
(1)共有持分に関する訴訟[共有持分移転登記手続請求訴訟,不実の持分権移転登記に対する抹消登記手続請求訴訟など]
(2)共有名義への所有権移転登記手続請求訴訟
(3)共有物妨害排除請求訴訟
(4)共有者に対する妨害排除請求 その他にも共有物に関する訴訟の種類は多くありますので,お問い合わせください。
5 その他共有物に関する法律問題 ・共有者の一人が死亡して相続人がいない場合の問題。民法第255条は「その持分は他の共有者に帰属する」旨を規定していますが,簡単にそうなるわけではなく,特別縁故者の財産分与の問題(前提として相続財産管理人選任)を処理しなければなりません。 ・その他
【共有物分割請求】
「共有を解消したい」という場合があります。たとえば,「土地や建物を共有にしているが,将来共有者が子どもの代になると人数も増えて管理がたいへんになる,自分の代で共有は始末しておきたい。」「共有物管理のことでいつももめているので,つくづくいやになった。この際,相手の共有持分を買い取って自分だけの所有にしたい(あるいはその逆)。」「いくつかの不動産が共有になっているが,誰がどの不動産をとるのかを決めて,共有をなくしてしまいたい」というような場合です。そのような場合には,共有物分割により共有関係を終わらせてしまうことができます。共有物分割には,協議(話し合い)による方法と裁判による方法があります。
1 協議による分割(共有物分割協議・共有物分割調停)
(1)共有物分割協議・共有物分割調停 共有物を分割したい場合(共有関係から抜けてしまいたい場合)には,共有者の協議(話し合い)により解決することが可能です。協議の場を持ちにくければ,共有物分割の調停を利用する方法も簡単です(裁判所に納める費用は低廉)。この協議や調停はご本人で行うことも可能です。その場合でも弁護士による法律相談をお受けになり十分な知識を備えた上で対応されるとご安心でしょう。
(2)弁護士による代理 共有物分割の問題は,できることならば裁判にせず,話し合いで早期円満に解決したいものです。早期解決のために,共有物分割の協議又は調停段階から弁護士に委任し,代理人として進めていくこともできますので,必要があればご相談ください。弁護士は次のような活動をしています。共有物分割協議開催の要請通知,対象物の評価(不動産鑑定士に依頼しての鑑定評価,路線価,業者評価など),分割案の検討,作成,分割協議設定・参加,交渉,調停同行・出席,合意書(調停条項案)作成,登記手続司法書士手配など
2 裁判による分割-共有物分割訴訟(共有物分割請求訴訟) (1)共有物分割訴訟とは 「土地や建物の数が多く分け方が難しい」「共有者の対立が激しい」など,どうしても協議や調停では分割方法を決められない場合も多くあります。そのような場合には「裁判で分割をする」という方法が用意されています。それが裁判所での「共有物分割訴訟」(共有物分割請求訴訟)です。 「訴訟」という言い方をしますが,これは普通の訴訟とは性質が異なります。共有者の誰が勝って誰が負けたかという結果になるのではなく,単純に言えば「裁判所に共有物の分け方を決めてもらう」という手続です。裁判所に訴えを提起すれば,最終的に何らかの分け方を判決で決めてくれます。裁判例では,訴えるときに希望する分け方を具体的に決めておく必要すらないとされています。そのためご本人だけで訴訟をしても,共有物分割で何の利益も得られず負けてしまうというようなことはまずありません。もちろん,裁判所がお望みどおりの形で分けてくれるとは限りませんので注意してください。訴訟にまで至ったのですから,分け方を巡って激しく対立しているケースのはずです。かなりしっかりとした主張立証が不可欠となります。インターネット情報や書籍などを頼りにしてご本人だけで訴訟を遂行していくことはかなりのご負担でしょうし,訴訟活動の不十分さに気がつかないリスクも高いと言えます。 そこで,この分け方について,依頼される方にとって最も良い結果が出せるように検討し,裁判所に働きかけて行くことが,依頼をお受けした代理人弁護士の重要な仕事になります。ご自身だけが利益になり他の共有者が不利益になるような分け方をいくら強く主張しても裁判所は決して認めてくれません。過去に積み重ねられた裁判例が許す分割方法や適用順序を正確に理解し,対象物の特質,共有者それぞれの具体的関与状況,過去の経緯など様々な事情を細かく把握し,ご自身にとっても良い結果となる分け方を工夫し,それを裁判所に証拠を示しながら説得していくことが大事なのです。共有物を人数分に分けてしまうだけですからそのレベルでは簡単なように見えますが,少しでも良い結果を得ようとするならばそこに共有物分割訴訟の難しさが出てきます。
(2)共有物の各種分割方法 共有物分割方法については,民法やこれまでの最高裁判所の裁判例では次のような分割方法が認められています。これらを理解し,取捨選択,組み合わせながら分割案を検討して主張しなければなりません。 訴訟を提起した後も,裁判所での「和解」で解決することも多くあります。その場合でも,このような分割方法で和解条項を取り決めています。
➀ 現物分割 たとえば,一筆の土地がその位置や形からみて二つに分割してもそれぞれ土地として有効活用できそうならば,新たに境界を決めて分けてしまいます。法律上は,この「現物分割」という方法が原則とされています。しかし,実際には現物分割だけで解決できるケースはそれほど多くありません。たとえば,共有物の土地を共有者それぞれに現物分割してしまうと狭くなりすぎるとか,細長くなりすぎて使えないということが多いのです。いくら物理的に分割できると言っても,そのような場合に裁判所は現物分割を認めません。 また,現物分割を利用する場合でも,次に述べるような様々な方法を組み合わせることがあります。 ・(価格調整をする)現物分割が可能な場合,完全に平等になるよう分割できなくても,取り分が多い方から少ない方へ超過分の対価を支払わせ価格調整をして分割する方法もあります。 ・(複数不動産を一括して分割する)不動産がいくつかある場合,一つ一つの不動産の現物を分割してしまうのではなく,甲市にある宅地はAさんに,乙市の田と丙町の山林はBさんにというように複数目的物を一括して分けてしまう方法もあります。これにさらに前述の価格調整を含める方法も考えられます。 ・(一部だけ分割する)さらに,共有者間に対立があっても仲のよいグループがある場合,グループ内では共有を残す形で現物分割をすることもあります。甲という不動産は仲のよいAさんとBさんの共有,乙という不動産は対立するCさん単独所有にするという,いわば一部だけ分割する方法です。
② 全面的価格賠償 これは一つの共有物について,一人の共有者がその共有物をすべて取得して完全な所有権者になり,残りの共有者には「その持分の価格」(不動産鑑定などで評価します)を支払うという方法です。裁判所の判決でそのように命じてもらいます。 もちろん,これに先ほどの共有者間の対立グループがある場合の解決方法を応用することも可能です。グループで共有物を全部取得し(そのグループの人たちの共有になります),残りの対立する共有者(またはグループ)に対してその持分の価格を支払うという判決が認められた例もあります。 この全面的価格賠償は,例外的で特殊な取扱いのように言われることもありますが,共有物の状況次第では決してそのようなことはありません。もちろん適切な主張と立証は不可欠です。
➂ 形式競売 共有物を分割することが困難な場合には,共有物を売却して,金銭に変えてそれを分配します。判決としては,裁判所が判決で競売を命じるという形になります。たとえば「甲土地について競売を命じ,その売得金から競売手続費用を控除した金額を,Aに3分の2,Bに3分の1の割合で分割する。」というような判決主文になります。 この判決に基づいて競売の申立をしますが,その手続は,強制執行の時の不動産競売と同じです。これを「形式競売」といいます(「形式的競売」と表記されていることもあります)。 裁判所での公平な競売手続により金銭に変え,持分に比例させて分けるのですから平等ですっきりした解決になります。ただし,共有者全員が経済的に損をしてしまうリスクもあります。まず,競売を申し立てるときに裁判所に納める費用(不動産鑑定士や執行官の調査などのための費用)としてまとまった額が必要となります(裁判所によって異なります)。次に,競売ですので一般論としては普通に仲介業者を通じて市場で売却するよりも安い価格でしか売却できないことが多くあります。当然のことながらいくらで落札されるのを正確には把握できません(なお,競売の落札価格は物件の場所,種類,景気や不動産市況により変動します。いくら安い価格設定でも落札者が現れないときもありますし,逆に思わぬ高値で落札されることもあります)。
(3)共有物分割訴訟における弁護士の活動
共有物分割訴訟では,以上のような様々な分割方法の優先順位と組み合わせを十分に検討します。その上で「最高裁判所の考え方からすれば,この分割方法が可能だから,これが優先されるべきだ」とか,「このような過去の経緯や不動産利用状況からしてこの土地はまずAさんの単独所有にする分割方法にすべきだ」ということを丁寧に裁判所に説明していきます。依頼者の方と共に,裁判所を「なるほど」と納得させることができるよう最善の訴訟活動をおこないます。
※その他の問題も取り扱っておりますのでお問いあわせください。
http://www.tatsuda-law.com/index.html